(2019年)。
個人的に、日本の古代史には興味はなかったのだが、動画の紹介
で知り、読んでみると内容がかなり衝撃的であった。
古代史については学校の教科書なんか読むよりこの書籍で充分だと
感じた。
帯に書かれているとおり、これまで「神話」とされてきた神武天皇
から始まる古代天皇の存在や、神武天皇が宮崎からはるばる奈良へ
遠征し、天皇制や大和朝廷に繋がる礎をつくってきた物語が書かれて
いる日本書紀・古事記を解読し、大阪市域~河内にかけての科学的な
地層調査結果をもとに、それが史実であったことを示す書なのである
それだけではない。
自身がODAで中国・敦煌を荷物を抱えて「陸行」した実体験をもとに
魏志倭人伝を「素直に読めば邪馬台国はこの辺りになる」と福岡県に
特定した説明には説得力がある。また勢力を拡大した大和朝廷が、
衰退した邪馬台国のある九州を平定したことを、日本書紀や中国の
『後漢書』倭伝など、各史料を精査することにより論理的に説明して
いる。
著者は日本人のルーツにも注目し、日本人を含む東アジア諸国のDNA
分析結果から、
「韓国人は日本人と中国人の混血民族」
「沖縄の人々のルーツは日本、特に南九州であることが確定した」
と述べている。
このように、従来の「日本人の祖先は大陸からやってきた渡来人」説を
大きく覆している。
また「アイヌは縄文人の子孫」ではなく、元々樺太などに住んでいた
民族であり、「日本人や琉球人とは別民族である」ことを主張している
最近は、日本の縄文時代の遺跡発掘や研究が進み、1万年~1万5千年
程度続いた文明であることが次第に明らかになっており、学者によって
は世界最古の文明だと言う人もいる。
著者も青森県の遺跡から発掘された土器片の年代分析により、日本で
最古の土器が一万六千年前に作られていたこと、縄文時代以前の
旧石器時代の遺跡が発見されていることにも注目している。
さらに、韓国・釜山の東三洞貝塚から大量の『縄文式土器片や、
西北九州型の釣針・黒曜石が出土』したこと、韓国の慶尚南道や
北朝鮮北部の咸鏡北道の貝塚から日本の豆粒文土器に似た土器が発見
されていることについて、著者は「日本から渡った縄文人が残した
文化」であり「韓半島各地へ移り住んだ縄文時代の人々が日本との間を
往来していたことを意味する」と断言し、他の根拠として「韓半島
南部から発掘された同時代人骨が、縄文人骨に酷似している」ことを
挙げている。
そして、日本が縄文時代の初期の頃、朝鮮半島の人々が絶滅し
約5000年間の間、朝鮮半島が「無人地帯」であったことから、
「(紀元)前5000年頃に住み始め、三千年以上にわたり半島の
主人公だった人々のルーツは日本」の縄文人であり、
「韓半島に残された三千年以上にわたる文化は、全て私たち日本人
の祖先が伝え、教え、残したもの」であり、「韓民族の文化の
基礎は日本から移り住んだ人々がつくった」と結論づけている。
縄文時代から歴史を下り、弥生時代を過ぎると、「前方後円墳」を
特徴とした古墳時代が日本にあるが、韓国にも前方後円墳が
少なくとも14基発見されているという。
最近(2021年)では下記のような報道もあった。
日本の古墳に似たものが発見されると、韓国の歴史にとっては
非常に都合が悪いのである。
著者の史料の解読は、韓国の正史とされる「三国史記」にまで
及ぶ。
そのなかには「倭人」(北部九州から来た日本人)の表現が
いくつかあり、朝鮮半島にあった古代の国 新羅の王族の祖先が
日本人であったことを読み取っており「韓国人の祖先の地は日本」
とも結論づけている。
著者の長浜浩明氏は、設計会社に35年従事したサラリーマン出身の方
であり研究者ではないのだが、著名な大学教授や作家の方が書いた
古代史に関する多くの文献に対し、ことごとく反論を展開していて、
「何の根拠も提示しない」「論理的一貫性がない」「珍論・奇論」
「古事記を読んでいない」「日本書紀を読んでいない」
果ては「学者としての資質に疑念あり」とまで断罪し、痛快である。
これまでの日本の古代史の「常識」を覆すこの著書だが、実は
最終章に著者の思いが最も強く込められているのである。
「終章 なぜ、戦後の古代史論は正気を失ったか」
それは、戦後、米国による約7年の日本占領の方針として、
日本人の思想を「検閲」し、危険な人物を「公職追放」したことに
始まるという。
「米国は、日本が二度と立ち上がれぬよう日本人の精神を改変する」
ことに着手し「その本丸が、歴史教育」だったということである。
「戦前の価値観を破壊するため、戦前の犯罪者や共産主義者を開放
して権力を与え」「国民の洗脳を推し進めた」。いわゆるWGIP
「War Guilt Information Program」というものである。
当時、米国の指令で「教職追放」も行われ、空いた教職のポストに
「反日左翼が “教職適格者” として埋めて」いったということである。
教育者たちは「相互密告」「思想チェック」が行われ、古事記や
日本書紀の内容を教えようものなら教職から追放され生活できなく
なるため、思想転向する教育者もいたという。
このように「日本中の大学、特に教育学と歴史学は反日左翼の巣窟
と化していき」「大学、高校、小中学に至るまで」「プロパガンダ
の場と化していた」ことを苦々しく語っている。
確かに学校で使った教科書に出て来る古代史は学んだ印象が薄い。
日本書紀や古事記の内容にほとんど全く触れることはなく、
「神話」のごとく扱われているのは、著者曰く「日本書紀
にある神武東征と神武天皇による日本建国の話は古代史学者や
考古学者の手に抹殺された」結果ということだそうだ。
よく韓国政府の「歴史歪曲」問題が取り上げられるが、日本の
古代史は、日本人自身によって歪曲されていたということである。
教職追放令は1952年に失効し、それから70年近くなるのにも
かかわらず相変わらず左翼学者は多く、現代のメディア報道も
反日の嵐でうんざりする。
しかしながら、「真実」を明らかにした著者のの言葉が、
私たちに希望を与えてくれる。
「事実に基づき、科学的・論理的に古代史を捉えることで」
「わが国の正史・日本書紀や古事記が輝きを増し、日本の礎たる
皇室と私たち日本人のルーツが明らかになった、そういう時代に
至ったのです」
近い将来、日本の縄文時代が「世界最古・最長の文明」として
世界史に記録されることで、世界から尊敬され、何よりも我々が
自分の国の歴史に強い誇りを持つ時が来ることを、切に願うばかり
である。