今回紹介するのは、ベストセラー「嫌われる勇気」の著書による
「アドラーに学ぶ よく生きるために働くということ」(ベスト新書)
著者 岸見一郎氏は、今でこそアドラー心理学の第一人者として
知られているが、この著書を読むと長らく非常勤講師として
勤務し、精神科医院にカウンセラーとして40歳を過ぎて初めて
常勤の仕事に就いたものの、その常勤の仕事の影響で病気となり
入院、非常勤講師の仕事を失い、フリーランスとして再出発する
など決して恵まれた環境にはいなかったことを告白している。
何のために働くのかについて著者は、
・働くことで自分の能力を他者のために使い、他者に貢献すること
結果として、自分自身に価値があることを認められるようになり、
こうした意味での「貢献感」が得られる仕事が望ましい、とする。
組織のなかで働いている、大きな組織であればあるほど
「貢献感」というのは薄くなると思われる。
それは組織内できちんと「あなたの仕事はこういうふうに役に
立つ」という教育がきちんとされないからである。
組織内で動機付けをされないと、モチベーションがなくなって
しまうことに組織が気づいていない。
この著書のなかでは、他者への「貢献感」というのが一貫した
キーワードになっている。
客が喜ぶ姿を見るのが嬉しいということが仕事の動機になっている
方を良くみかけるが、それも同じ意味と理解でき、「貢献感」を
感じる仕事をすることが、よく生きることにつながる、ということ
なのだろう。
著者は、組織で働く方のための記述も多く割かれている。
・上司と部下は、地位や責任の量の違いであり、人間としては対等
・部下への指導方針を決めるために部下のの実力を知っておくこと
が当然であり、部下の失敗に適切に対応するのが上司の仕事
・仕事への貢献感は自分が感じるものであり、「会社への貢献」など
と上司から与えられるものではない
理不尽な上司への対処の仕方についても下記記載していて参考になる。
・なぜ理不尽に叱る上司がいるのか、それは仕事では自分に能力が
ないのを知っており、部下を叱りつけることで部下の価値をおとしめ、
自分の価値を高めようとするからである。それは劣等感の裏返しで
あり部下を叱りつけることで自分の権威を守ろうとするメカニズムが
働いている。
このような上司に対しては、落ち込むことや怒ることなど必要なく、
普通に接する(普通に意見を言い、普通に反論する)のが良い、
上司の怒りの感情は上司自身の問題であり上司自身が何とかするべき
感情なので、いちいち反応する必要はない。仕事以外にエネルギーの
無駄使いはしないこと、であるとする。
その他には、
・組織全体が大きな失敗をすることを恐れ、保守的になっている
・仕事が行き詰ったときには、決めたことを見直したり、目標を
変えればよい
・仕事が楽しいとは、仕事に習熟してこそ言えるもの。仕事が
楽しくないということは、仕事に必要な知識、技術が十分に身に
ついていないこと、もしくは仕事で貢献感を持てていないから。
・仕事は生きることの一つの営みであり人生のすべてではない、
また成功は人生の目標ではない、ということも。